日本の新幹線がインド国土を駆け抜ける ~住友電工グループの鉄道事業ビジョン~
欧州仕様の市場に日本の技術導入を
製品検査工程で、日本基準と欧州基準の違いが露わになったことが示しているように、インドの鉄道は、従来、欧州仕様・規格で敷設・運営されてきた。英国統治時代の名残ともいえる。その市場に対して、今回、円借款による日本の技術・製品の導入は、欧州一辺倒だったインドの鉄道市場に楔を打ち込んだという見方もできる。その動きが明確に示されているのが、インド初の高速鉄道建設計画だ。このプロジェクトは、ムンバイ~アーメダバード間約500kmを約2時間で結ぶというもので、日本の新幹線方式の採用が決定している。2015年12月に実施された日印首脳会議で覚書が交わされ、2017年9月には安倍総理も出席して起工式が行われた。"質の高いインフラ輸出"の象徴とされるプロジェクトだ。2023年開業を目指しており、円借款(総工費の約8割)による案件で、「ALL JAPAN」で手がける。今回のデリー~ムンバイ貨物専用鉄道へのトロリ線納入実績を背景に、加藤やハルデッシュ、木下ら営業担当メンバーは、再び受注に向けた取り組みに臨む考えだ。さらにインド市場は、高速鉄道に留まらない鉄道建設計画が目白押しである。主要都市でメトロ建設が進む一方、デリー~チェンナイ、チェンナイ~ゴア、カルカタ~チェンナイなどの大都市を縦横に結ぶ大動脈貨物専用鉄道の建設などが構想されている。旺盛な鉄道需要に、住友電工グループは培ってきた技術とノウハウで応えることで、インドの鉄道インフラの近代化に寄与していく考えだ。
パッケージによる製品供給の実現へ
住友電工グループの鉄道関連事業は、インドに留まらない。今回のプロジェクトとほぼ同時期に、インドネシアやベトナム、タイなどの鉄道プロジェクトに製品を納入してきた。ここで留意すべきは、今回のインドのプロジェクトで生産・納入しているのが、トロリ線単体という点だ。その現状に踏み込んだのが、前出の加藤だった。
「当社が鉄道プロジェクトに供給できる電線は、トロリ線など電車線と呼ばれる製品のほか、電力ケーブル、信号ケーブル、通信用の光ファイバケーブルなどラインナップが揃っています。私が志向しているのは、これら製品をパッケージとして提供すること。それによって、ビジネスボリュームも格段に拡大します。実際、タイやベトナムのプロジェクトでは、パッケージによる製品供給を実現しました。このパッケージによる提案活動に現在力を注いでおり、インドのみならず、ASEAN諸国に積極的なアプローチを開始しています。このパッケージ供給を、鉄道関連事業の新たなスタンダードにしたいと思っています」(加藤)
住友電工・鉄道事業パッケージ製品群
分野 | 製品 | |
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電力 | 架線 | トロリ線、吊架線、き電線、保護線 |
変電所 | 高圧電力ケーブル |
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駅舎 | 中低圧電力ケーブル、制御ケーブル |
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信号 | 信号保安設備 | 信号ケーブル、光ファイバケーブル |
3 | 運行管理システム | 光ファイバケーブル、制御ケーブル |
情報通信システム |
住友電工グループの鉄道関連事業は、かつて日本の近代化を支え、その後の高度経済成長にも貢献してきた。そして今、その蓄積された技術やノウハウは、新興国の経済成長や生活向上に大きく寄与する、新たな局面を迎えた。住友電工グループが関わった新しい鉄道。それは鉄道事業の確かな足跡であり、未来へ続く確かな可能性を指し示す軌道でもある――。