住友電工の流儀~呉華銘×鄔挺之~
大疆への積極的なアプロ,チ開始提案が受け入れられない中での模索
トニ 最初のプレゼンテーションの日のことはよく覚えています。二人でDJIのロビーで長い間待ちましたね。そのとき、DJIの研究開発チームの方に会い、名刺を交換しました。しかし、プレゼンテーションでは、金属が信号を遮断すること、現在採用しているプラステックが軽量・弾性特性に優れていることなどから、マグネシウム合金は却下されてしまいました。そこで挫けずに、私たちが次に着目したのが、ドローン飛行の際に情報を伝える配線素材でした。たとえば、可動ジンバル(ぶれ防止装置)は空撮の精度を左右する装置であり、障害物の回避や対象の追尾などにおいても、信号等の情報流通によって機能します。そこにニーズはないか。何かしらの課題はないか。ミンさんと継続的に議論しました。そして行った提案の一つが、可動ジンバルにすでに採用されていたFPC。当社への切り替えを狙ったものでした。
ミン ええ。しかし先行する他社のFPCを前提とした構造設計となっており、簡単に受け入れられませんでした。その後、私たちは足繁くDJIに通いヒアリングを重ねる中で、ある課題を見出しました。可動部分の構造を制約する設計をしたFPCの客先組み立て時の生産性の低さです。しかし、FPC構造で設計されており変更ができないため、採用を継続しているとのことでした。これはチャンスがあると思いましたね。
現状のドロンの課題明確化と課題解決に向けたスペックン
トニ 加えて課題がもう一つ。高速データ通信の長距離伝送において、画像・映像データを安定化するため減衰対策が必要というもの。これら課題を解決する製品を提供すれば、新たな市場開拓が実現する、光が見えてきた手応えがありました。そんなときだったと思います。極細同軸ハーネス(MFCX)を提案することを、ミンさんが発案したのは。MFCXは外径が0.35から0.20mmの超細径のハーネスで、FPCが抱える課題解決に極めて有効な製品でした。ただこの製品は大量生産されておらず、同軸ハーネスを使用したドローン構造の設計はない。果たして、FPCに代わるものとして提案できるかどうか。厳しい局面でしたね。そもそも、設計は日本で行っているものであり、当時深圳にその機能はありませんでしたから。
ミン あの時が、一つの分岐点だったと思います。従来、私たち営業担当は、日本や欧州でスペックインされた製品を中国で製造し、中国の顧客に販売していました。しかし、今回初めて私たちが中国という地場で、私たちの発想と技術、そして戦略で同軸ハーネスのスペックインを実践したわけです。
トニ そうですね。これは非常に画期的なことだったと思います。スピーディな対応が求められる中、日本に打診するのではなく電子ワイヤー事業部のナショナルスタッフで同軸ハーネスをスペックインし、サンプルを完成させて提案しました。その結果、最初のサンプルで採用が決定。極めて高い評価をいただき、その後、順次、FPCから当社の同軸ハーネスへの転換が進みました。DJIの大ヒット作「ファントム」に続く新モデル「マビック・プロ」に採用され、現在DJI製ドローンの情報系ハーネスの約7 割は当社が占めています。文字通り、新たな市場を開拓し拡販に成功したと、自負を持って言えると思います。
チムワクこそが最も大切グロバルリダを目指して
ミン DJIに向けた取り組みの時も同様でしたが、いずれの仕事においても、一番大切なことはチームワークだと思いますね。
トニ まったく同感です。それは営業部門のみならず、製造部門も含まれます。エレクロニクス業界を取り巻く環境が、急速に変わっていく中、それら変化に柔軟に迅速に対応していくために求められるのは、強いチームワークにほかなりません。その実現のために、ミンさん自身が心がけていることは何ですか。
ミン プロフェッショナルの意識ですね。お客様に対して、製品に対して、知識においてもプロであること。それが、お客様や社内メンバーとの信頼関係を築くベースにあると思っています。プロ集団としてのチームワークを醸成していきたいと考えています。
トニ 当私はイノベーションの意識を常に保持することを大切にしています。それは技術的なことでなく、日々の活動や思考において、人と同じことをやるのではなく、自分の個性や特長を活かして、新しいことに取り組み、革新につなげていくということです。それが、結果として他社との差別化を生んでいくと思っています。ミンさんは、今人事も担当していますが、グローバルリーダーへの道を志向されていますか。
ミン 現在の私のミッションは人事戦略と事業戦略を確実に一致させ、すべての部署と協力して彼らと事業目標を達成することです。そのためには、信頼関係こそが大切。仲間との強い信頼関係で厳しい局面を乗り越え、会社をより良い未来へ導くことが、グローバルリーダーへの道だと考えています。
トニ 私たちはドローンという市場を開拓しましたが、言うまでもなく、ここに留まらず新たな市場開拓を進めなければなりません。私はやはり自動車分野で起きている大きな変革がチャンスだと考えています。コネクテッド化や電動化など自動車は今後一層エレクトロニクス化が進展します。その新たな動きを機敏にキャッチする中で、市場開拓を進めていきたい。そうした取り組みを牽引することで、グローバルリーダーへと成長していきたいと考えています。
配置文件
呉華銘吴明
2000年
住友電工香港電子線製品有限公司 入社
2002年
住友電工(蘇州)電子線製品有限公司
営業部 副経理
2005年
住友電工香港電子線製品有限公司
営業 経理
2012年
香港科技协会有限公司
営業 経理
2014年
住友電工香港電子線製品有限公司
営業·マ,ケティング高級経理
2019年
現職
鄔挺之吴托尼
2005年
住友電工(蘇州)電子線製品有限公司 入社
営業課長、上海営業所勤務
2007年
住友電工(蘇州)電子線製品有限公司
副経理
2012年
住友電工電子製品(深圳)有限公司
高級経理
2013年
住友電工電子製品貿易(上海)有限公司
(エレクトロニクス中華圏営業統合)
高級経理
市場開発部長兼北京分公司責任者
2017年
住友電工電子製品貿易(上海)有限公司
副総経理
市場開発部長兼北京分公司責任者
2019年
グル,プグロ,バル幹部人材*に認定
*海外グループ会社の経営層より毎年選出された,“自社のみならず,グローバルに事業運営で活躍を期待する人材”。